はるか遠くのどこかに
眠りこけてしまった街がある
その街は古く 遠くの昔からある
街は栄え、いろんな人やものが出入りして、様々な文化が花ひらいた
著名な芸術家や科学者たちがあいし、すみついた
いつ頃からか、街はこつ然と眠りについた
一説によると、悪魔に魅せられた博士がし仕組んだことだとか、
あるいは中世の研究者たちの失敗で、街を黄金に変える代わりに眠らせてしまったのだとか、いろいろにいわれている。
その街には、天の時と地の時とをはかる、巨大な時計があり、たくさんの塔がそびえ立つという。
一匹の猿が、地下に眠っていた城の心臓を盗み出し、車輪をつけて乗り回す。
お猿はビショップのマネをして、十字架のついている白い背高帽と白い前掛け、金の杖を振りかざして、お城の心臓を乗り回す。
ひとたびお城の外に心臓が出てしまえば、城はたちまち崩れ去る。
(みんなだって、心臓をもっていて、それが自分の体の外にとびでたら、たちまち大変なことになるでしょう、それと同じことです。)
さあ大変。みんなお猿を追いかける。
白い衣と帽子を盗まれたビショップは、お猿よりも真っ赤になって追いかける。
だけどお猿は自由闊達。
木のイスも踏みつけて乗り越えるし、柱や壁だってかけ登れる。
上階のパイプオルガンの上を車輪で駆け抜けて、壮大なドレミファソラシド ドシラソファミレドを繰り返す。
パイプは、これまでこんな風にひかれたことなど一度もないと、興奮ぎみに煙を吐き出しよろんだ。
お猿が塔まで登ると、石の古い階段も、これまでタイヤで登られたことなど一度もないと、目をくらくらさせるように階段の波をくゆらせた。
ビショップや他の僧侶たちは、あとから階段をしかるようにふみつけて、もとの場所に落ち着かせた。
とうとう、塔のてっぺんにくると、大きな大きな鐘の列。
お猿は心臓を、その鐘のどこかに隠した。
取り戻したければ、鐘をついてご覧。
見事に鐘を打ち鳴らせば、心臓はきっと転げ落ちるさ。
もしかしたら、破裂してくだけるか、塔の下まで落ちっちまうかも知れないだけさ。
それでみんな困ってしまって、鐘をまったくならせなくなってしまいました。
わたしが思うに、この街が眠りこけているのは、このためなんだと思います。